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なば
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非公開
趣味:
読書・ふらりとどこかに行く
自己紹介:
絵を書いたり文を書いたり時々写真を撮ったり。
コーヒーとペンギンと飛行機が好き。
twitter=nabacco

三国志大戦関係
メインデッキは野戦桃独尊、独尊ワラ。君主名はなばーる。
MGS関係
白雷電が大好きです。以上。
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航空関係のプロジェクトXな話が好物です。

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World Alone 4

注意書き

■公式は『MGRR』ですがこちらはお蔵入りになった「MGSR」時間軸想定です。
■雷電一人だと話が進めないので創作人物が出てきます。ご注意下さい。

そんな調子の話でも宜しければ、「つづきはこちら」からどうぞ。




 この辺りの地理は詳しく解らないが、熱反応を頼りに人気の少なく雪が多く残っている方へ走った。
 追ってくるイェールの形を大まかに解析してみて、恐竜に例えたオーサンを馬鹿に出来ないと雷電は思った。思い返せば、『ジュラシック・パーク』にこんな形で群を成して逃げ回る小さな恐竜が出てきた気がする。けれどもこいつは捕食者の方だ。
 研究者達が作り、雷電自身が戦った強化外骨格は基本的に人間と大差ない形だったから、ここまで獣じみたものは見た事がなかった。隠し玉か、既に実戦投入されているものを持ってきたのか。いずれにせよこれ以上遠くに逃がす気はない様だ。
 足跡を残さない様に道路の縁を走る。イェールが追って来る。不意に、自分でも思い付いた様なタイミングで着地した右足を軸に爪先に力を込めて踵を返し反転、急減速Gを踏ん張り、イェールに正対する。相対速度時速約百キロ以上の世界で抜刀、更に踏み込んだら、イェールが真上に跳んだ。体を捻りながら地面に伏せたが、尾の端が上腕をかすめていった。かすめた箇所に浅い切り傷が残る。尾は刃物なのか。解らない。人間が腕組みを解く様にイェールの前肢が展開され、四つ足になって反対車線に着地した。
 高い音がする。探知用や撹乱用の超音波ではなさそうだ。音は途絶えず、耳鳴りの様に頭に満ちて煩わしい。
 雷電がそちらを振り返るのとイェールが背負っていた物を構えたのが同時。サブマシンガン。多分そうだと思った。
 相手が構え終わるより早く、雷電は開きすぎた間合いを一気に縮めて斬りかかった。超音波が間近に大きく聞こえ、銃ごと本体を斬ろうと決めた一振りより早く、イェールは尾を地面に打ち付けて跳ねた。砂が舞い上がり、音を立てて降ってきた。
 穴は鋭いV字に抉れていた。尾が何なのか解った。大出力の振動を起こし、遠心力で威力を増強する、程良くしなる素材で出来た高周波ブレードだ。僅かなデータや現物を基に新しく作られたのに違いない。道具は使い方次第だなと、雷電はつくづく思った。あれなら脚の代わりにバネの様に使えるだろう。しなる剣なんて出鱈目も良いところだ。けれども一度の出撃や戦闘で使えるのは一本だけあと見積もった。あんな無茶苦茶な使い方をして刀身が保つ筈がない。だからCは刀身の保守点検機能を鞘に詰め込んだのだろう。一々補給基地に戻らなくて良い、長期の戦いを想定した設計だったのだ。
 発砲音がして、砂の雨に混じって一緒に細い散弾が降ってきた。避けられず、斬る事も弾道を逸らせる事も出来ない程細かな、文字通り針の雨としか表現のしようが無い程だった。
 砂と針の雨を左腕で受け、右半身を庇いながら屈み込み、一度ブレードを鞘に戻した。目玉の機械化はまだ行っていないから、こんな所で失うわけにはいかない。砂礫を弾き返し、針が装甲の隙間に刺さった。
 奴はどこだ。低い雑音の向こうに高周波ブレードの唸りが聞こえる筈だ。
 着地音らしい足音。反響音ではない。そちらから、高いあの音も聞こえてくる。
 隙間に刺さったままの針が擦れ合い、思う様に動かない。掌を結んで開く動きの途中で急に左腕から感覚が抜けた。打ち込まれたのは人工筋肉用の麻酔を含んでいる針だ。そう判じた。
 そして、ここは本当なら腕の状態を気にしている時ではなかったのだ。もう一発、針の塊が吹き付けられる。今度は纏めて腹に被弾。痛みはないが、すぐにそこが無くなった感覚に陥った。
 これが致命的だった。両脚、左肩、と自分の体に穴を開けられてしまった様な虚しさが、自分の動きが確かではないという不安となって上書きされてしまう。感覚がない。補助脳は外部からの侵入要因による感覚神経の撹乱を報告してきた。急に心許なくなって、演習で使ったソフトを呼ぼうとした。
 空気の変化が襲ってきた。
 目の前にイェールが居た。
 相手に表情があるなら、もたついている自分の事を嘲笑しただろう。イェールが自慢する様に尾を振り回し、襲いかかって来る。ブレードで受け止めようと身構えて、その直後の閃きが雷電を後ずらせた。相手はとにかく大きく固い高周波ブレードを使って雷電の新世代型をへし折ってくるだろうという忠告。
 逆立ち、側転し、水平方向に体を回して、ブレードと両脚の鉤爪の撫で斬りや突きが飛んでくる。対話出来るなら、ミスを犯した雷電を嘲る言葉を浴びせただろう。麻酔の所為もあってとにかく圧されていた。
 抜刀できたら、相手のブレードさえ斬り落とせたら、感覚の鈍りのハンデがあってもこちらが優位なのに、先の事を考えるとブレードは手放せない。最初から銃を持ってくるべきだったのでは、あるいは選り好みせずに磁歪型の短ブレードも持ってくれば良かったかも知れない。
 結局俺はまともに戦えないじゃないか。
 配達を頼んだオーサンはどこで道草食っているんだ。それとも工場は別働隊に襲われたのか。
 そう思った時、視界の端でオレンジの光が瞬き、何かがイェールの胴部を殴りつけた。
――やったか、雷電には当たっていない気配、上々だ、良くないです店長、
 その会話をかき消しながら次のオレンジがイェールを襲う。強化外骨格の外装は頑強に作られているから並大抵のダメージは与えられない筈だ。多分ほんの少し凹むだけだろう。
 イェールの乱舞が鈍くなり、第三者の出現に不快そうに唸った。
――挟み撃ち、店長それ危険、
 何かを話し、片方が回転数の低いエンジン音を立てて離れていく。またオレンジ、雷電はすぐにイェールを盾にして庇う。今度の着弾は首だった。どうやって来たのか解らないがオーサンとフーの二人は無事らしい。この暗さと距離で命中させるのはどちらだろう。スコープでも着けているかも知れないが。
 一点は動かず、ほぼ決まったペースでイェールを狙って撃ち続けている。もう一方は雷電とイェールの様子を見ているのか、近付いたり駐まったりと、落ち着かない動きをしている。
 不動の点がまたオレンジの炎を閃かせ、イェールの外装をへこませた。
 屈辱を感じたのだろう。イェールが可聴音域で叫んだ。野生動物が吼えて自らを大きく見せようとする様に、威嚇の音声を最大出力で放った。
 イェールは本命の雷電よりも、鬱陶しい豆鉄砲を殺す方を優先した様だった。本命は飛び道具も持ってないし麻酔は充分に打ち込んだ。雷電の事はそう判断された様である。
 尾を大きく打ち付け、方向転換しようとしたイェールの両脚が目の前を過ぎていくのを逃さなかった。イェールを追って踏み込み抜刀。手首と肘のひねりを効かせて何とか片方の膝を斬り落とした。人工筋肉の黒い断面をやっと拝めた。
 イェールの絶叫がまた響く。今度は自らのミスを嘆く叫びだ。
 標的を雷電に再変更し、前肢で逆立ちになりながら踏ん張り、雷電に向けて尾を大上段から打ち下ろした。
 散々地面に打ち付けられ、刃こぼれを起こした無惨な刀身が降りかかる軌道に、雷電は、正確には雷電の視覚情報を元に補助ソフトが、瞬時に見付けて判断した。
 勝てるかも知れない切り込みの角度と場所。
 ブレードを正しくその角度に刃を立てて構え、一秒より短い間、待った。人間の感覚で瞬時には出来ない事を機械の体がやってくれた。イメージしただけの姿勢を瞬時に理解してミリ単位で形にしてくれる。使えないのは電波の発信系統と自動防御や相手の弱点を割り出す機能だけで、こういう機能は生き残っていたようだ。
 単分子構造に限りなく近づけた炭素の刃が僅かな隙間に入り込んで、思っていたよりも軽い手応えでステンレス刃を真っ二つにした。巨大な刃が重い音を立てて地面に刺さる。片足とメインの武器をなくしながら、イェールがしぶとく前肢で銃を構えようとするのでスリングを斬って、銃を蹴飛ばした。
 やっと勝てる、生き延びられると安堵するのはまだ先だ。
 背後からL字型の何かが飛んでくるのに反応して、雷電はそれを足裏で掴んだ。銃だ、と期待しながら次いでブレードの柄を口で咥え、右手に持ち直した。
 大きな銃だが、対強化外骨格徹甲弾対応の単発銃ではない。ただのマグナム弾を装填したリボルバーだった。
 後で文句言ってやる。雷電は心に決めた。
 リボルバーを構えながらイェールに組み付いた。首の根本、胸と腕の繋ぎ目。紀元前の鎧の時代から幾ら丈夫に作っても脆くなる点。そこにリボルバーを押し込んで切れ目無い連射を見舞う。装甲が大きく歪んで変形したが、中枢までは壊せなかった。まだイェールは暴れている。高周波ブレードの刃が通らないかも知れない。欠けて、修理に時間が掛かるかもしれないと思うと躊躇われた。
――だが殺せ。
 脳の奥が囁いた。
――奪ってやれ。息の根を止めてやれ。鬱陶しさを除去するんだ。
 お前は生き残りたいだろう、と様々な言い方で語り掛けてきた。リベリアの渾名の欠片か、それとも生存本能か。その正体は何でも良かった。
 雷電はリボルバーを捨ててブレードを逆手に持ち、弾けた装甲目掛けて突き立てた。暴れるイェールの上で感覚の無い左腕に力を込め、上体を捻り、抜いては刺し、何度も装甲の隙間を突くのを繰り返した。何度目かにイェールは動かなくなった。生き物の死体のように痙攣する事もなく大人しくなった。
 試作機なのか、実践投入済みモデルなのか解らなかった。けれどもこいつの生まれた場所は自分と同じ、あの穴の向こうだろう。
 勝てた。生き延びた。
 それでも雷電の腕はイェールを切り裂き続けた。頭は安堵しているのに機械は怖がっている。助けに来たフーとオーサンはオーバーキルだと言うだろう。
 腕は頚椎を断った突きの後、強化外骨格の隙間を縫ってイェールを解体し、脊髄の周りに配置された燃料電池を次々に食った。
 この補給を怠ると演習と同じで動けなくなるんだよな、と雷電はぼんやりと考えた。
「雷電!」
「おい!」
 超音波と殴打の痛みが頭を駆け、そして、フーとオーサンの叫び声と同時に、腕が止まった。微かな磁気を辿ってオーサンの方を見ると、彼の手に短ブレードがあった。
 自分の肘から下がイェールの体液で青白く光っていた。体内補給線以外からも、外骨格を這い回り、プログラムされた命令通りに破損箇所を探し修復して死んでいき、あるいは外骨格の隙間から体内に染み込んで次に使われる時まで活動を停止する。人体で言う白血球や血小板であるが、血液型に当たる物質やプログラム等は付いていないので、どんな形の奴からでも相手を切り裂いて手足を突っ込めば「輸血」できる。
 こんなになるまで自分は何をしていたんだ、と雷電はやっと我に返った。そして、自分に向けられている二人の表情を恐る恐る、読んだ。
 人間の枠からはみ出した戦いをした。
 オーサンは緊張しきった固い顔のまま、全く様になっていない格好で峰をこちらに向けてブレードを構えている。フーは上手く隠そうとしているが、値踏みする様な眼で見ている。
 雷電は、彼等と自分の間の決定的な違いを今一度思い知った。
 未改造の人間とサイボーグと言う区切りではない。
 ただの人間と、意思疎通出来る兵器の隔たりだ。二人から見れば今の自分は、突然現れた宇宙人に等しい存在だろう。人間面していられるのも人間扱いしてくれるのもここまでかと、諦めの気持ちが忍び寄ってくる。
 脳や自家臓器の為のパック食糧を食うのと変わりない行動だ。己の体が欲求に従って取った行動だった。こうしなければ明日には動けなくなるかも知れない。
 お腹が空いた。だから食った。機械になった自分の体が求めたのだ。
 一週間泥水を啜って生き延びた記憶が浮上しかけてまた沈んでいく。
「……あんた一体何してんだ。どう見てもやり過ぎだろ? もう決着はついただろう?」
「……怖かった」
 咄嗟に嘘を吐いた。
「追っ手が来るのは考えていたけれど、見た事の無い奴だったから徹底的にしなきゃ……そう、怖かったんだ」
 怖かったんだ、と雷電はもう一度言った。
 確かにイェールに対する本当の恐怖もあった。けれども戦闘直後の動揺した雰囲気の中で「自分の体がコントロール出来なかった。そして、持ってきた補給パック以外の飯を欲していた」という新しい情報を今、この場で二人に説明する自信が無かった。
「えーと雷電、何これ」
 そうだった。幾ら記憶を奪われ四つん這いになっても、元はこれは人間だった。
「追っ手の……ロボットだ」
 頭の中でナノマシンが人殺しの後悔を抑えようと躍起になっている。操られている程度の差はあれ、自分もこれも大して変わりはない。戦闘で打たれた麻酔が大分効いてきた。両脚の感覚が無い。イェールの脇にへたり込んだ姿勢から動き出す自信が無い。
 動けるか、腰が抜けたかというフーの問いに、ただ頷いた。また嘘をついた。
「所で、何で二人で助けに来たんだ? それに、頼んだ事はちっとも守れて無いじゃないか」
 フーは猟銃を抱えていた。リボルバーと弾丸の口径は共通の様である。
「それと、この銃は熊用か?」
「そうだが護身用だ。狩猟の趣味はない。いざって時に撃てなかったら困るから射的の練習だけはしてるんだよ。それと、ツーマンセルでありスリーマンセルだよ、雷電。お客様に戦わせて自分達は手を拱いて見ているなんて出来ねぇよ」
 フーの弁明の脇でオーサンが銃が重かった、とぼやいた。
「あんな重いのどうやって渡したらば良いですか、考えてたの、知ってたの? 五キロあるって。俺投げられませんですよあんな物!」
「……そりゃ配慮が足りなかった。ところで、ガレージは? ここまで移動している間に別働隊に焼き討たれていたら出発だの連絡だの、そう言う所から練り直しになるだろ?」
 荷物ならトラックに積んである、と二人は言った。仮にガレージが焼かれていても、フーの貴重品は家に置いてあるし、オーサンは荷物に積んであるらしい。連絡手段も一応、どうにかなる様にしてある。
「でも、このバイクでの旅をしたいくないですね、店長」
「だな。綺麗じゃない。俺もこんなトラックは嫌だ」
 ガレージが焼かれていない事を祈ろう、と二人は話をガレージに引き上げる方に持っていった。
「雷電、動けないならトラック持って来るから待ってろ。荷台にちっさいクレーンが付いているからそれで引っ張り上げる」
「……ありがとう。そうだオーサン、俺のブレードと敵が使っていた銃、探してくれないか」
「銃も? 何で? 荷物増え嫌だ」
「俺が使えると思うから持っておきたいんだ」
「……雷電、お前の部屋って片付いてないだろ?」
 呆れたフーがそう言ってトラックに戻るのを見送りながら、オーサンが小さな声で雷電に問い掛けた。
「雷電、敵をオーバーキルの本当は別な理由しょ?」
 雷電は答えなかった。オーサンは抜刀したままだった短ブレードを鞘に収め、周囲を懐中電灯で照らした。
「何かしてた雷電の顔は表情ゼロのお面だったけど、腕の動き方が乱暴な探し物してる感じだ?」
 オーサンは雷電の返答を待っている様だった。
 協力者達に、イェールからの「補給」の事は何と説明したら良いのだろうと雷電は考えた。
 単に「言い忘れていた事だが、脳とは別にこの体には燃料が要る」と言えば良いのか、もっと踏み込んで「しかし、その燃料の持ち合わせは無いので襲って来る敵を倒して手に入れるしかない」という所まで伝なければいけないのか。
 悩んでいると、オーサンは答えを聞くのを諦めたらしく、めんどーと言いながらブレードと銃を探しに行ってくれた。
 トラックのライトが揺れながら近付いて来る。
 再度イェールに目を落とす。もう動く事はない。四肢を落としてやった。動けるはずがない。
 いや、そんな事が重要なんじゃない。
 あれだけ切り裂いたのに脳がない。
 もしかしたらイェールではないのか。だとしたら完全なロボット兵器の試作品か。
 クレーンのフックが視界の隅に垂れ下がった。フックを掴んだら引き上げるから、掴まれとフーが言う。
 その声も、オイルで汚れた鋼鉄の糸を撚ったワイヤーも、その先にぶら下がるフックも、何もかも遠くに感じられた。
 まるで夢でも見ているみたいだ。
――そうそれでいいただしい
 急に高い声を受信した。電波の声だ。
「……あんたは誰だ……」
 クレーンのフックを掴むとフーがゆっくりと引き上げられた。誰も雷電の呟きに気付かなかった。
――だまつてわたしのはなしをきけ
 声の発信源は先程のイェールだった。首の無いダチョウに巨大な剣の尻尾を付けたあれである。送信の主はどこかに潜んだまま、イェールを中継してこの声を送っているのだ。
――われわれわだいにかいはつはんたちのいう「いぇる」だ。めいれいおうけておまえおついせきしてきた
 トラックの荷台に乗り上がるのも、麻痺した体では上手くいかなかった。脚が持ち上がらないのでフーだか、オーサンだか、どちらかに荷台に押し上げられた。抜き身のブレードが荷台に先に待っていて、ぼんやりしながらそれを鞘に戻した。色々な事が一気に起こり過ぎた。
――おまえのかいしゆうまたわはかいめいれいをうけている。きようはんしやとあうまえにできたらよかつたがうまくいかなかつた
 襲撃してきたイェールに殺されかけ、暴走し、とりあえず今は頼るしかない仲間に警戒され、気味悪がられ、そして新たな追っ手が自ら存在を明かした。戦い疲れているのか、麻酔は脳にまで効果があるのか、周囲の事が夢幻の様に思えてきた。
――なるべくこわさないでもつてかえれといわれているからわれわれのつかえるぶきはかぎられている。てをぬいているわけではない。がいこつかくようますいもしくははつきんぐしかしゆだんがないだけだ
 声は自分の手持ちの武器の貧弱さの不満をたれている様だが、もしかしたら何かを警告しているのか、助言しているのか、内容を聞いて理解出来なかった。あらゆる音が遠くで滑って流れていく。
――おまえがつかおうとしているわれわれのじゆうわかいはつはんのしよぞくちがいでつかえない。そしてわれわれわまたあうことになる
 イェールの声はこれを最後に途切れた。
 やたらと揺れるトラックの荷台で仰向けになっていた。田舎の星屑まみれの冬の空がただ静かに自分達を見下ろしている。
 とりあえずガレージに戻ったら、イェールの言った事が正しいのか、銃を試してみようと、雷電はぼんやり思った。



■皆様すいません、色々あって遅くなりました。次は早めにうpしたいです。
■もう少し自分に余裕が出来たら良いなと思います。
■思いの外長くなってしまいました。

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初めまして

今になってこちらのサイトにたどり着き、お話を読ませて頂きました。
『The Dawn』から続けて読みましたが、ちょっと言葉にならないくらいの衝撃です。もちろん良い意味で、です。
まるで公式から出た小説を読んだような気分になりました…。
mgs2から4までの雷電に関するストーリー補完は、もうなばさんのssをコ○プロさんが映像化、もしくはゲーム化してしまえばいいんじゃないかという位に、感動しています。感動しすぎて、この作中の雷電のことを思うと、ちょっと胸が苦しい勢いです(笑)

2015年現在、管理人様が私のコメントを見てくださるかは分かりませんが、作品に心動かされたことを重ねてお伝えしておきます。
催促してしまうようで申し訳ないですが、作品の続きを心待ちにしています。気長に待つつもりなので、是非とも完結まで読んでみたいです。
長くなってすみません。最近になってまた雷電好きが再熱したもので、つい興奮してしまいました。
最後に、こちらのサイトに出会えて良かったです!語彙に乏しい表現になってしまいますが、今とっても嬉しいです!
私も白雷電は大好きですよ(*´ω`*)
  • popo
  • 2015/02/07(Sat)23:31:42
  • 編集