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なば
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読書・ふらりとどこかに行く
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絵を書いたり文を書いたり時々写真を撮ったり。
コーヒーとペンギンと飛行機が好き。
twitter=nabacco

三国志大戦関係
メインデッキは野戦桃独尊、独尊ワラ。君主名はなばーる。
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白雷電が大好きです。以上。
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航空関係のプロジェクトXな話が好物です。

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傘は要らないよ

注意書き

pixivで虎龍様の「キスの日」イラストを拝見してカッとなって書きました。「書いてしまいましたが、イメージレスポンスして宜しいですか」とお伺いしたら快諾頂けました。虎龍様、ありがとうございます。そう言うわけでpixivにも載せています。
■サイボーグの構造の考察など捏造ありあり。
■時系列的にはMGRR後日談に当たります。
■本編のネタバレを一部含みますのでご注意下さい。
■サニー救出編の捏造もあります。しまるどぁn(ry
■月一更新、思わぬ形で実現できました!

そんな調子の話でも宜しければ、「つづきはこちら」からどうぞ。

 ジョージが言うには、ワールドマーシャル社のサーバールームから救出されたサイボーグの子供達には目蓋を開けたまま寝る者が居るらしい。
 嘘みたいな本当の話だ。実際にサニーも見た事があるが、あれはびっくりした。
 毎日何時間も戦争のバーチャル体験をさせられ、就寝時間が来たら薬で強制的に眠らされる暮らしを強いられた彼等、彼女達は脳と眼球だけを残してその他の全てを奪われた。
 彼等の目玉は人工涙液を満たした強化アクリル球で包まれ、「目が乾く」という事は基本的には無い。体があった頃無意識に行っていたまばたきも忘れてしまったから、「目蓋を閉じる」動作をせずに、酷い者だと暗い場所で突っ立って目蓋を開けたまま眠る。
「けれどもアニキは違うんだなぁ」
 そう言うジョージが見る先、明かりから逃げる様に照明を落とした部屋の隅には、何十本のケーブルに繋がれ、ささやかな電子音とLEDのまたたきに包まれた黒い鎧姿の男が居る。知らない者が見れば鎧だが、あれが彼の体そのものなのだ。
「……そうだね」
 サニーは囁いた。
 雷電はサニーの個人研究室の壁に背を預け、うなだれ、目蓋を閉じて眠っている。LEDのオレンジや緑の他に、パソコンの画面の照り返しの柔らかい光が雷電を包んでいた。
 今日は雨だった。会社の近くは降ったり止んだりを繰り返していたが、州全体にまんべんなく雨が降っていた。雷電を照らす弱い光が、雨の日に街灯を煙らせる霧に似ていた。
「雷電は大人になってからサイボーグにされたから……」
 彼と初めて会った時の衝撃をまだ覚えている。今日とは正反対に、太陽から逃げられない程晴れて乾いた日だった。
 まだ小さかった自分を片腕で抱え、幾重ものセキュリティシステムと警備員の包囲網を突破した。蛍光灯を鈍く反射する暗い廊下、冷えたコンクリートの壁と古い梯子、滅菌室、屋根裏のダクトまみれの暗い空間、ソーラーパネルに塗れた屋上。目まぐるしく世界が変わった。大きな音がして恐ろしく感じる事もあった。けれども目を閉じる事が出来なかった。
 最後に森に逃げ込む時まで、雷電は落ち着き払っていたし、思い返せば反撃する時に使った銃には消音器がしっかり着けられていた。少しでもサニーの精神を傷つけない様にしていたのだ。ずっと彼は自分を抱えて守り続けていた。利き腕だけで銃を捌き、ナイフを使い、目標ポイントに着くまでずっと、自分の体を盾に戦っていた。
 体つきを見れば男性だと解るけれど、一見厳しい女性にも見える表情と、肩まで届く白っぽい金髪の調和がとても綺麗だった。時々自分を励ましてくれる声の低さには不思議な響きがあって、恐ろしさを感じなかった。全てが終わり、雷電の息が整った時、あの頃読まされていた絵本の聖書の挿絵の所為で「あなたは天使なの?」と訊いてしまった。その時の雷電の答えは幽かな笑みだけだった。ちょっと困った様な、眉尻が下がって唇が少し引き延ばされた笑い方だった。
 あの時の自分には何だか悲しそうだとしか解らない表情だったが年月が経ち、様々な人と出会った今ならあれが解る。そんなのじゃないと自嘲を言う代わりの、子供を絶望させない為に精一杯やってみせた笑顔だったのだ。
「手伝う事本当に無い? 大丈夫? もう夜の九時半過ぎてるし、サニーの親父さんもさすがに怒っちゃうぜ?」
「うん。点検箇所が多いから、ケーブルを繋ぐだけでも時間が掛かるから、とても助かったよ。独りだったら絶対徹夜になっていた。ありがとう、ジョージ」
「サニー、ちゃんと寝ろよ。ウルフがこの間『あの娘は年齢に見合った食生活、運動、睡眠が足りていない』って言ってたぜ?」
 ジョージがブレードウルフの口調を真似て言った。ジョージもブレードウルフも自分も、雷電に助けられた不思議な縁でここに居る。時々マヴェリック社の子会社から派遣されてくるサイボーグの子供達もそうだ。
「ウルフに、分解しちゃうぞって言っちゃって!」
 互いに笑ってお休みを言い合いジョージと別れ、部屋の照明を常夜灯にした。
 相変わらず雷電は眠っている。パソコンが監視する脳波も正常で、体中の強化外骨格や人工筋肉の出力も切られている。全身が、全精神が眠っている。
 強化外骨格の全てのチェックには一晩以上かかる。その間雷電自身何も出来ないしサニーも何もしてやれる事は無い。せいぜい、チェックするパソコンの処理速度を上げる位しかしてやれない。
 非力でごめんねと思いながら、雷電の顔を覗き込む。
 戦闘型強化外骨格は、至近距離に近付くと本人の意思とは無関係に自動で攻撃するモードが備わっているが、今、雷電はそれすら断っている。サニーは、ここが雷電にとって安心できる場所だと判断してくれたのが嬉しかった。
 私が好きな雷電は弱っている人を放っておけなくて、不必要な暴力を振るう人が大嫌いで、怒りんぼで本当は泣き虫な「ソフト」の彼なのだろうか。それとも、技術の限りを尽くして小指の先の小さなセンサーから、ヒト型の限界とまで言われる出力を誇る人工筋肉で織り成された「ハード」の彼なのだろうか。
 もちろん「ソフト」に決まっている。けれども時々彼がこうして人目を忍び、助けを求めて来る時、自分が出来るのは彼の「ハード」の部品調達とささやかなバージョンアップと修理だけだ。「ハード」の彼を助けるのは勿論楽しいし、自分が必要とされているという実感を感じられる。
 度々悩むがいつも結論は同じだ。私が好きなのは、雷電自身だ。どんな姿になったとしても雷電が好きだ。これからもずっと雷電は戦い続けるだろう。それを自分は陰ながら助けるだろう。でも、いつか雷電が世界中のどこにも居なくなってしまったらと思う。彼には家族が、帰りを待っている人が居る。なのに、そんな事は最初から無かったのだと言わんばかりに戦い、傷つくのを止めない。
 どんな気持ちで、どうしたらいいのか解らなくなって、サニーは雷電の鼻の頭にキスをした。これまでのありがとうも、これからのありがとうも、お休みも、大好きも、行ってらっしゃいも、お帰りも、全部の気持ちが行き場を求めてそうなった。
「お休み雷電……でも、独りは淋しいもんね」
 今日の夕方、小雨が降る中、突然やって来た雷電の爪先はどんな道を歩いてきたのか、摩耗が激しかった。ステンレスでできている筈のパーツだった。なぜ、どうして、レジャーシートなんかでも良いから濡れるのを防がなかったの、と問うと彼は一言、荷物になるからだ、と言っていつの昔に見た笑顔をくれた。
 幾ら戦闘型で全天候対応してあるとは言え、自分の体をもっと気遣うべきだ。サニーも「雨に降られたら風邪をひくから注意しなさい」位言われて育った。何の処理もしていない自分と精密機器の塊の彼を単純に比較は出来ないが、サニーは取り敢えず車とガレージの例を引き合いに出した。ガレージがあれば車は野外駐車した場合より長持ちする。それでも雷電は、荷物になる、いつまでも雨が降る訳じゃない、と強情を張った。
 いつまでも雨は続かない、いつも晴れるとは限らない。互いにそう言い合っている所にジョージとウルフがタオルを抱えて来た。双方の言い分はどちらも正しいが、雷電はもっと、誰かに助けたいと思われている事を自覚すべきだとウルフが言って、ようやく雷電が黙ってくれた。
 ずぶ濡れの雷電の体を丁寧にジョージと一緒に拭き上げた。端子を挿してショートでも起こされたらたまらないからだ。そのあいだずっと、雷電がここに寄るまでの話や互いの昔話や仕事の話をした。その時に見た指先も、綺麗な予備パーツの爪と比べると色は埃色にくすみ、先の方は波打っている。いつもそうだ。この人が私を頼る時はいつだって、弱り切って疲れ果てている。
 サニーは机の下に畳んで仕舞い込んだ寝袋を引き出し、ファスナーを開けて広げた。二、三度はたいて形を整え、毛布にして、無造作に広げた雷電の脚の間に収まり、一緒に毛布を被った。自己満足だ、雷電にとっては良い迷惑に過ぎないと思いながら、鋼材と人工筋肉で織り上げられた彼の胸に体を押しつけた。
 常夜灯の光も落とした。小さな電子音とLEDの幽かな光。オフィスのブラインドカーテンの隙間から広い社内の道路を照らす街灯の光が差し込む。そして雷電の冷えた強化外骨格の体。
 これが、この人が私にくれた世界だ。だから私も、この人に素晴らしい世界をプレゼントしたい。自分は雨だと自嘲したこの人が、何の心配もなく愛する人と、陽の下で生きていける世界を贈りたい。ケーブルが這い回る雷電の首に腕を回し、今度は唇にちゃんと、さっきよりも長くキスをした。
 そして毛布の中でサニーは祈った。どんな時でも願いはいつも同じだ。
 いつか雷電が戦わなくても良い日が来ますように。





■「傘は要らないよ」……あるアニメのEDの歌い出しです。解る人居るかなー?
■pixivで5月23日がキスの日に因んで「メンテナンス中で眠っている雷電の鼻にサニーがキスしてる」絵があって萌え滾って勢いだけで書きました。
■MGSで一番好きなCPは実は「サニー→雷電」です! サーセン!

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