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読書・ふらりとどこかに行く
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絵を書いたり文を書いたり時々写真を撮ったり。
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メインデッキは野戦桃独尊、独尊ワラ。君主名はなばーる。
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航空関係のプロジェクトXな話が好物です。

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知っている夢

注意書き

・R魏延(大車輪)+UC女体化馬岱です。
・×でなくて+なのはただ単に二人が仲良いだけだからです。

以上の事を踏まえて、ご了承頂ける方のみ「つづきはこちら」からどうぞ。
フォントサイズが大きくなります。

 同じ芝居を観るように、何度も同じ夢を見る。
 題材が同じでも、本物の芝居や講談なら、解釈が違っていたりして面白いのだが、夢はそうとは限らなかった。いつも、どうしたらこの結末を回避できるのかと一生懸命考えるのに、結局同じ結末しか巡って来ないのだ。
 それは人を殺す夢だった。
 何度も馬を駆り、鎧に身を包み、得物を手にして殺してきたが、それとは意味の異なる殺しだった。
 見知った人間を謀に絡め取って殺す夢だった。
 けれどもいつからか、ただの夢ではないと気付いてきた。
 ずっと昔から、自分がその人物を殺すのは決まっていて、そしてそれを何度も何度も、手を変え、品を変え、話を変え、姿を変えて繰り返してきたのだ。
 多分、自分と相手がその名を冠している限り、この「お話」は続くのだろう。
 自分の名は馬岱だ。
 殺す男の名は魏延だ。


 花の季節はとうに過ぎ、若葉が生い茂っている合間を、木漏れ日がちらつく昼過ぎだった。
 暖かくなり始めた風が柔らかい葉を揺らしながら通り過ぎ、眠りに陥りかけた馬岱の前髪をゆるやかに揺らした。
 仕事をさぼって、なぜこんな所でかくれんぼの真似事をしているのだろうと考えようとして、止めた。思いだした端から、胸の隅がちりちりと痛むような、小さな怒りが思い起こされた。脳裏をかすめる記憶は、思えばなぜ、相手も自分もなぜこの程度の事で怒ってしまったのかと思って呆れる程の内容の、些細な事だった。こんな事で腹を立てた自分も相手も大人気がなさ過ぎると思うと、自然と唇から笑みが漏れる。
 お前はもうちょっと飾り方を覚えるべきだと言う低い声が蘇った。声の主の手の平の中に、金と珊瑚の繊細な細工をあしらった髪飾りや瑠璃色の玉や錦があった。その言葉ときらきらとさざめく宝石達が原因だった。
「馬岱」
 下の方から割れ鐘のような、低く、太い声がした。見下ろすと、肌の青白い筋骨隆々とした大男が居た。青みを帯びた毛の色と、その眉の下の深い赤の瞳がまっすぐこちらに向けられていた。
「ここにいたのか。降りて来い」
 しかし、馬岱は男の命令を無視してそっぽを向いた。
「奴と喧嘩してつむじ曲げるのもいい加減にせんか、お前もお前で大人気ねえな。こんな所で隠れなくても、奴は探しに来るぞ」
「怒ってませんし、隠れてもいません」
 思わず、自分でも良くなかったと思うくらいに頑なな声が出た。
「あの人が悪いんです」
「それは奴も認めている。行って許してやれ」
「行くのは嫌です。探しあぐねてここまで来れば良いんです」
 風が吹かない。枝から下ろした脚をぶらぶらと揺らしながら、肌に触れる気流を楽しんだ。
「それとな」
 大きな溜息を吐いて、男は言った。
「その木はこの時期毛虫が多い」
 毛虫という言葉に反応して、馬岱の脳裏に居もしない虫が出現した。思わず、ぞわりと腰の辺りにおぞましい感触を感じた馬岱は裏返った悲鳴を上げながら枝から飛び降り、靴を履くのもそこそこに、木陰から充分離れた地面まで走って何かに足を取られて躓いた。
 そうやって逃げた馬岱に、男が声を掛けた。
「靴忘れてるぞ」
「嫌です、戻りたくないです」
 そんなに毛虫が嫌か、と笑いながら男が靴を拾ってきてくれた。
「お前、そう言えば泳げねえんだったな」
 渡された靴の中に毛虫が落ちていないか、色々な角度にひっくり返してみながら確認した。中に、うごめく綱の切れ端のような得体の知れない物は、見当たらなかった。
「何でまたそんな話を」
「涼州にゃ毛虫が居ねえなと思ったからな。でっけぇ水たまりも無えだろ」
「泳ぎ方が解らないだけです」
「もう少ししたら水も温かくなる。泳ぎ方くらい教えてやらぁ」
「いいです。馬に跨ってなら渡河くらい出来ます」
「つれねえな」
 溺れたらどうするんだと続ける男を無視して、馬岱は片足立ちになって靴を履いた。両足を靴に突っ込んだのを見計らったかのように、男が馬岱を抱き上げた。丸太のように太い腕が胴を捉え、熊のような手のひらが添えられた。
「馬鹿にしないで下さい! 歩けます!」
「そうじゃねぇよ。お前あのままだとどこかに逃げちまうだろ」
「逃げたりなんかしません!」
「どうだかなぁ」
 また一つ明るく笑って男は歩き出した。
「……文長殿」
「何だ?」
 今まで出会ったどの魏延とも異なるが、初めて会った時から何となく、この男が魏延だと解った。尊大な態度と自信に満ちた言葉遣いと、一種の狂気めいた一途さのある性格が、往々にしてどの魏延も同じだから、何となく気付いたのだった。もうここまで来ると本能のようにも病気のようにも思えて、馬岱は胸の内でため息を吐いた。
「あなたを斬る夢を良く見るのです」
 呟くように言った。魏延の歩みが止まった。
「何だか、良くない予感がしてなりません」
 この先どうなるかなんてまるで知らないかのように言ったが、嘘だった。
 確かに、腹が立つ程傲慢すぎる性格の魏延を斬って清々したと思った事もあったし、何も考えずに殺せることもあった。随分昔は自分が魏延を斬る事に疑問を抱くどころか、斬って嫌な気分になるだろうと言う事が想像も付かなかった。
 先程まで軽口を叩いていた強面が引き締まり、凄みを更に増して馬岱を睨み付けていた。
「よくって事は、結構見ているんだな」
「はい」
 今思えば、あれは夢などではなくて、過去の自分達が演じてきた情景の記憶なのかも知れない。夢にしては、どれもこれもが生々しすぎた。
「追いかけたり後ろから斬ったりと差はありますが、どれもこれもあまり良い感じのしない殺し方です」
 話したところで何か変化が起こるとは全く限らないが、このまま抱え込んでいても何も事態は変わらないと思った。だから、余すことなく喋ることにした。
 もしかしたら、魏延も同じ経験をしているかも知れない。そして、知っているのなら、非力な自分ではなくて発言力も影響力も強い魏延なら、あの結末を、更にはこの国の行く末も変えることも出来るかも知れない。
「私はあなたを斬りたくない、裏切りたくない」
 魏延は訳が分からないといった顔で自分を見ている。当然だろう。自分たちの人生が何度も繰り返されているもので、しかも多少の差はあれ結末は同じ物が待っているのだと言われれば、誰でもまさか、とは思うだろう。
「けれども、私ではどうする事も出来ないんです」
 ――でもあなたがもしも同じ経験をしているなら、あなたは私とは違うから――
 そういう期待を込めて思いつく限りのことを話したけれども、腹と胸の間くらいに何かがわだかまっているような、気持ちの悪い感覚が残った。
 それを晴らす為にも、出来ることなら、魏延も同じ事を経験しているのなら、自分が魏延を斬らずに済む未来が見える言葉を、答えて欲しい。そう願った。
「……今度の俺もお前に斬られるのか」
 魏延が、彼らしからぬやわらかな笑みを見せた。人を安心させる為の、子供をあやす為の、そういう笑顔だった。この人は全て解っていて、敢えて避けようとしないのだ。
 なぜそんな顔をするのですかと問うよりも早く、魏延に強く抱き込まれた。調練にはまだ行っていないのか、わずかな汗の匂いしか感じられなかった。厚い筋肉を覆う肌から、何も心配することはないという意思が伝わってきた気がした。
「お前が後悔する位良い奴になって死んでやるよ」
 そう言って魏延はまた歩き出した。背中に回された大きな手で、何度もなでるように叩かれた。体格と身長の格差も相まって、まるで子供を抱えた親そのものだったが、今度は馬岱も暴れなかった。時々すれ違う将兵が何か囃し立てるのが全く気にならなかった。
 馬岱の不安は、春の昼の陽光にも先程の魏延の笑みの中にも解けることなく、いつまでもくすぶり続けた。
 その燃え残りの気持ちを消すように、目蓋を閉じた。目の裏に、陽射しの煌めきがしばらくきらきらと輝いた。
 せめて、と願わずには居られなかった。
 せめてあれが避けられない事なら、それまでの日々を後悔無く過ごせて、その時までに自分の答えを見つけられますように、と。






あとがき

大戦2の時に群雄伝でRもSRもどちらの魏延も馬岱にばっさり斬られるシナリオがあって、「つまりこれって見方を変えたら延々魏延は馬岱にぶった斬られ続けるって事だよね?」と思い、そこから脱出した話を書いてみようかと思ったのでした。
で、2008年の7月の.netの対決特集だかで馬岱がSR魏延と組んでいたので、「よしじゃあ、ぶった斬られない未来が待っていそうなのは車輪魏延だー」とイメージして書いたのでした。
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はじめまして

こんばんは!
車輪魏延がとても格好良くて惚れ惚れしました
馬岱も可愛いです
  • はまち
  • 2010/12/15(Wed)23:24:49
  • 編集

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