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プロフィール
コーヒーとペンギンと飛行機が好き。
twitter=nabacco
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メインデッキは野戦桃独尊、独尊ワラ。君主名はなばーる。
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白雷電が大好きです。以上。
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航空関係のプロジェクトXな話が好物です。
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プロローグ
注意書き
■PSP『勇者のくせになまいきだ。』の魔王と破壊神の出会いの様な話です。
■ストーリーモード開始前の自己紹介やステージの様子、図鑑、取説等から妄想力逞しく考えてみました。
■「プロローグ」って題打ったけれども続きません。
それでも良いよって方、「つづきはこちら」からどうぞ。
「工事中に付、近付かないで下さい。危険です。」の看板が道路に立てられている。目の前には、アスファルトを剥がされて水道管らしい物が見えるまで深く掘られた竪穴状の工事現場と、そこで汗水垂らして泥にまみれて働くおじさん方が居た。
大して珍しい光景ではない。けれども、ここまで深く掘らないと水道管とか出てこないんだ、という好奇心から穴を覗いていたら、後ろから物凄い勢いで突き飛ばされてしまった。
黒板を引っ掻く様なブレーキの音、誰かの悲鳴、足の裏に地面はなく、目の前には竪穴とおじさん方。
猛スピードで突っ走っていた自転車に弾き飛ばされたのだろうけれども、ただ穴に落ちていくしか出来なかった。
「お目覚めですか、破壊神様!」
到底人語には聞こえない、動物や機械とも違う音で目が覚めた。「ぎゃんぎゃん、ぎたぎた、がじがじ」といった風に聞こえた筈の音はしかし、どういう仕組みか先程の言葉として理解できた。
薄暗く湿った場所に仰向けになっていた。周囲は岩盤を人力で何とか掘った様な、地下の様な、防空壕や鉱山跡の様な場所だった。あまり深く掘られていない様で、どこからか少しだけ光が差し込んでいる。
おかしい。工事現場の竪穴に真っ逆さまに落ちた筈なのに。あの穴は確か土だった筈だ。作業員の服が泥まみれだったのを何となく覚えている。
「私は魔王と申します。どうか、破壊神様のお力で勇者共を撃退し、世界征服の願望を叶えさせて下さい!」
身を起こすや否や、目の前に居た黒ずくめの男が平身低頭してそう言った。相変わらず、人間の言葉には聞こえない。魔王と名乗ったそいつが顔を上げる。紫色の頭、血の気の悪く彫りの深い痩せた顔、瞳は赤く、白眼の部分は真っ黒だった。傍らには木の枝に頭蓋骨を刺した杖とツルハシが転がっている。
――魔王?
「はい、左様でございます」
首を振って辺りを見回す。自称魔王と自分しかこの手狭な穴には居なかった。魔王と名乗るならばドラゴンでもグリフォンでも従えていても良さそうなのに、そういうのが見当たらない。
――本当に?
「疑われるのも致し方の無い事でございますが、本当です。……以前はこの大陸の半分近くが魔物の縄張りのような物で、そこで数々の魔物を地上で支配しておりました」
――じゃあ、何でお付きも居なくて独りぼっちなの?
お恥ずかしながら、と魔王は昔話を始めた。
昔は確かに魔王が地上の一部を何の心配もなく支配できていた。支配と言っても広大な山や谷や草原を飛び回って魔物の生態系を管理して、人間世界との緩衝地帯として作った砂漠帯を保守して、手空きの頭の良い魔物に仕事を丸投げする位だった。
やっている事は規模の大きい庭師じゃん、と突っ込みたかった。
人間の方も魔王の治める一帯には近付かなかった。人間の言い分に因れば「魔王の治めている野山一帯を毒気が覆っていて危険だから」近づけなかったのだそうだ。魔王が整備した砂漠の所為で、魔物と人間双方が接触できない仕組みになっていたのも理由に挙げられる。
魔王は人間世界から魔物を守る為、そして、必要以上に人間を危険な目に遭わせない為に日夜懸命だった。人間達が魔界と呼ぶ自らの領内の生態系も、人間世界の生き物達も双方を守りたかった。
しかしある時から、人間が緩衝地帯を越えて魔物達を容赦なく狩り始めた。徒歩で三日以上掛かる砂漠の緩衝地帯を越えて、毒気を物ともしない鎧に身を包み、何度も討伐軍がやって来て、その度に魔王領は焼き払われた。
「ある時」とは具体的に何年前の事なのかと訊いてみると、魔王は「今の人間の王の祖父の代から」と答えた。アバウトな、と思いながら、感覚的には二十年以上戦争状態が続いている様な物だと理解した。
最初の内は講話を結び、事態の収拾を図ろうとしたが端から無駄だった。人間達は魔王の土地の「毒気」を地上から排除すべきだと言って、聞く耳を持ってくれなかった。
わざわざ緩衝地帯を作って接触しない様にしてあるのに、こうも荒らされて堪る物かと配下達は言い出した。もっともだ。だから魔王も組織的な抵抗をすべく、やはり山野を飛び回り、土地毎の指揮者を選び出し、人間の軍隊を手本に反撃を始めた。
しかし二回の王の代変わりを経る内に、その努力も虚しく、魔王の土地は人間に征服され、魔王自身も命からがら人間世界に独りで逃げた。
魔王の土地はなくなった。毒気は発生しなくなった。
それでも人間共は、まだ魔王の首級が上がっていないので安心出来ないと、更なる討伐を王に望み、猛者の中には討伐軍よりも早く魔王を殺すべく行動し始めた者も居る。猛者共は勇者と呼ばれた。
魔王は最後の手段に出た。もう、形振り構っても、人間に容赦もしていられなかった。
やり返してやる。人間のやった事と同じ事をやってやる。その為にこの世の全ての破壊と創造を司る神を味方に付ける必要があった。それが「破壊神」だ。
身を隠す場所を作る為に体力の限りに穴を掘り、破壊神を呼ぶ為に全ての魔力を使い果たした。文字通り精一杯頑張って、本当に精根尽き果てる一歩手前まで来た。
努力が報われ破壊神様を呼ぶのに成功したのは良い物の、引き替えに自分は動く事も、魔力で目くらまし程度の術をしてみせる事も、何も出来なくなってしまった。喋るだけでも精一杯だ。
話していく内に魔王の額に汗が浮いて、土下座でもする様に上体を支えていた両腕が震えだした。ゲームで言うところの残りライフ一、残機無しの状態を身を以て表している。
だからガリガリでスッテンテンなのか、と理解した。
そうして話を締めくくり、どうか、と再度魔王は頭を下げた。
夢か現か、実は頭を打って意識が戻らない最中に脳神経が足掻いて見ている夢なのか、本当に異世界にぶっ飛んだのかなんてどうでも良かった。単に、こんなに一人で頑張った独りぼっちの魔王の努力を蹴ってやる気が無かっただけだ。
――私なんかで良かったら、やってみようか。
立ち上がって、ツルハシを手に取った。
続かない。
後書き
twitterで「勇なまの破壊神×魔王とか見てみたい」と知り合いが呟いたので、何それ面白いと思ったのがこれを書くきっかけでした。何故魔王が一切動かないのか、破壊神に丸投げなのか、世界征服してやろうと思い立った理由とか勝手に考えまくりました。